「いよいよ、動かないといけないな」と思いながら、どこから手をつければいいか分からず、また帰省の日が過ぎていく…。そんな経験はありませんか?
実家じまいが進まない本当の理由は、「やる気がない」からではありません。「何をどの順番でやればいいか」が、頭の中で整理できていないからです。
この記事は、単なる読み物ではありません。実家の玄関でこの画面を開き、一つずつチェックを入れながら使う「道具(アクションガイド)」です。
記事の最後には、ダウンロードして使えるチェックリストも用意しています。現場に持参して、ぜひ活用してください。
「なぜ今やるべきか」のリスクや法改正の詳細は「初めての『実家じまい』完全ガイド」「実家のことリスト10」「タイミングと見極め方」で詳しく解説しています。
この記事では「とにかく動く」ことだけに集中します。

実家に行く前の「準備物」チェックリスト

現場で作業を効率よく進めるために、まずは以下の「七つ道具」をカバンに入れましょう。
特に固定資産税の納税通知書(毎年4〜5月に届く茶封筒)は、不動産の詳細情報と現在の税額が記載された実務の要です。
| ✓ | 準備するモノ | 内容・ポイント |
|---|---|---|
| □ | スマートフォン・充電器 | 写真撮影、型番検索、家族との共有に使う。バッテリー切れに注意。 |
| □ | メジャー(3m以上) | 大型家具のサイズ計測、搬出ルートの通路幅確認に使う。 |
| □ | 懐中電灯 | 屋根裏・押し入れの奥・物置など、照明が届かない場所の確認用。 |
| □ | 軍手・マスク・ゴミ袋 | 汚れの確認や、明らかなゴミを数枚捨てるための最低限の装備。 |
| □ | 油性マジック・養生テープ | 「保留箱」の作成やメモ・ラベル貼りに。あると作業がぐっとはかどる。 |
| □ | 飲み物・軽食 | 作業に集中するため、あらかじめ用意。コンビニが近くにない場合も多い。 |
| □ | 固定資産税の納税通知書 | 【最重要】 毎年4〜5月頃に届く茶封筒。 実家にあるか確認、または手元にあれば持参。地番や税額が載っており、今後の「地図」となる書類。 |
【実践】実務を漏れなく進める6つのステップ

上から順番に進めることが理想ですが、「今日はSTEP1だけ」でも十分です。一度に終わらせようとせず、できるところから一つずつチェックしていきましょう。
STEP 0:家族の合意形成と現状把握
実務を始める前の土台です。ここが崩れると後から兄弟間のトラブルに発展します。特に「近隣への挨拶」は見落としがちですが、空き家の防犯・防災における重要な一手です。
| ✓ | 項目 | 内容・ポイント |
|---|---|---|
| □ | 兄弟姉妹・親族との合意 | 窓口になるキーマンを決め、立て替え費用の精算ルールを共有する。「一人が抱え込む」のが後のトラブルの最大の原因。 |
| □ | 親の意向確認 | 「処分」は禁句。「お母さんが転んだら私が悲しいから」という言い方が自然に伝わる。 |
| □ | 現状の記録(写真撮影) | 全部屋・庭・外観を撮影。業者への見積もり依頼や家族間の共有に必須。 |
| □ | 近隣への挨拶 | 管理者の連絡先を隣人に伝え、異変があったら連絡してもらえる関係を作る。空き家の防犯・防災の第一歩。 |
STEP 1:重要書類(4種の神器)の確保
これを紛失すると、すべての手続きが数ヶ月単位で遅れます。片付けの初期段階で必ず探し出し、安全な場所にまとめて保管しましょう。
| ✓ | 書類名 | 内容・ポイント |
|---|---|---|
| □ | 権利証(登記識別情報) | 仏壇の引き出し・タンスの奥・金庫・銀行の貸金庫など。紛失すると売却手続きが数ヶ月単位で遅れる。 |
| □ | 実印・印鑑カード | 権利証と同じファイル、救急箱や裁縫箱など「隠し場所」になりやすい場所を確認。 |
| □ | 通帳・証券 | 紙の通帳がないネット銀行が存在しないか必ず確認する(「デジタル遺品の罠」参照)。 |
| □ | 保険証券 | 郵便物の山や古いファイルの中。火災保険は「空き家用」への切り替えが必要かも確認。 |
STEP 2:事務手続き・インフラ管理
空き家特有のリスクを最小限に抑え、維持コストを削減するステップです。「止めていいもの」と「止めてはいけないもの」の判断が家の寿命を左右します。
| ✓ | 項目 | 内容・ポイント |
|---|---|---|
| □ | 郵便物の転送届 | 納税通知書や金融機関からの重要書類の紛失を防ぐ。 郵便局で手続き、1年間有効。 |
| □ | 電気・水道の契約維持 | 清掃・内覧・維持管理のために継続が必要。 アンペア数を最小プランに変更してコストを抑える。 |
| □ | ガスの解約 | 空き家での火災・爆発リスクをなくし、基本料金の無駄をなくす。 再開通時は立ち会いが必要。 |
| □ | 火災保険の「用途変更」手続き | 【最重要】空き家であることを申告しないと、火災時に保険金が下りない。必ず保険会社へ連絡する。 |
STEP 3:デジタル遺品の整理
目に見えない資産の管理です。放置すると「死後の課金」が続いたり、大切な資産が取り出せなくなったりします。特にマイナンバーの暗証番号は親が元気なうちにしか確認できない情報の筆頭です。
| ✓ | 項目 | 内容・ポイント |
|---|---|---|
| □ | スマホ・PCのロック解除番号 | 端末を解除できなくなると、中の情報へのアクセスが一切できなくなる。 |
| □ | マイナンバーカード暗証番号 | 再発行が非常に困難。行政手続きや銀行照会に支障をきたす。親が元気なうちに必ず確認。 |
| □ | ネット銀行・証券のログイン情報 | 通帳がないため発見が難しく、資産が永久に引き出せなくなるケースがある。 |
| □ | 月額課金(サブスク)の解約 | ジム・新聞・動画配信・プロバイダ料など。亡くなった後も課金が続く「死後のトラブル」を防ぐ。 |
STEP 4:物の整理(生前整理・遺品整理)
「捨てる・要らない」の二択は禁物です。「手放す・整理する・誰かに使ってもらう」という言葉に変えるだけで、親御さんとの会話の空気がガラッと変わります。
| ✓ | 項目 | 内容・ポイント |
|---|---|---|
| □ | 「保留ボックス」の設置 | 迷ったモノは一旦箱へ。「要る・要らない」の二択で手が止まらないようにするコツ。 |
| □ | 業者の相見積もり(3社以上) | 「一般廃棄物収集運搬業許可」の有無を必ず確認する。 現地見積もりをしない業者には要注意。 |
| □ | 買取・寄付・データ化の活用 | 「捨てる」以外の選択肢で費用を抑え、罪悪感も和らぐ。 買取併用型の業者を選ぶのも一手。 |
STEP 5:不動産・出口戦略の実行
最後にして最大の意思決定です。補助金や税制優遇には期限があります。売却活動と並行して早めに専門家へ相談することが、手元に残る現金を最大化する鍵です。
| ✓ | 項目 | 内容・ポイント |
|---|---|---|
| □ | 相続登記(名義変更) | 2024年4月から義務化。3年以内に申請しないと10万円以下の過料。 司法書士へ依頼(「初めての『実家じまい』完全ガイド」参照)。 |
| □ | 不動産査定の依頼 | 複数の不動産会社に依頼し、今の「手残り額」を把握する。 査定は無料でできる。 |
| □ | 境界確定の有無確認 | 測量が必要な場合、数十万円単位の予算が必要になることも。 売却前に早めに確認する。 |
| □ | 補助金・税制優遇の確認 | 自治体の解体補助金(最大100万円程度)、3,000万円特別控除(相続から3年目の年末が期限)。早めに確認(「タイミングと見極め方」参照)。 |
業者選びで失敗しないための「3つの絶対基準」

「安さ」だけで業者を選んで後悔するケースは後を絶ちません。以下の3点は、どんな業者に依頼する場合でも必ずチェックしてください。
| No. | チェック基準 | なぜ重要か |
|---|---|---|
| ① | 一般廃棄物収集運搬業許可の有無 | この許可がない業者に依頼すると、不法投棄など後日トラブルに発展するリスクがある。 |
| ② | 現地見積もりの実施 | 訪問せずに電話だけで金額を決める業者は後日の「追加請求」トラブルの元。必ず現場を見てもらう。 |
| ③ | 遺品整理士など専門資格の在籍 | 物の扱いが丁寧で、適切な法務知識を持つプロがいる目安になる。資格の有無を事前に確認する。 |
「プロに頼むことは親不孝ではない」。重い家具の運び出しや大量の不用品処分は、無理に自分でやろうとせず、適切な業者に任せることも大切な判断です。
まとめ:「開ける」ことから始める

このチェックリストは、「実家じまい」という大きな山を登るための地図です。全部を一度にやる必要はありません。今日から一歩ずつ進めていきましょう。
まずはこの3つだけ、意識してみてください。
- 固定資産税の納税通知書を手に取る:茶封筒を開け、毎年いくら支払っているかを確認するだけでいい。
- 重要書類の場所だけ聞く:権利証・実印・通帳・保険証券の4点。「ここにある」と分かるだけで十分。
- 近隣の方に挨拶する:「何かあったら連絡してください」の一言が、空き家の防犯を一気に強化する。
この週末、実家の玄関を開けながら、親御さんにこう声をかけてみてください。
「固定資産税の茶封筒、どこにあるか分かる?一緒に確認したいんだけど」
その小さな一言が、数年後のあなたと大切なご家族を守るための、確かな第一歩になります。
本記事で記載したチェックリストは、こちらからダウンロードいただけます。

